前回に引き続き、9月28日に新たに公表された「医療機関のホームページの内容の適切なあり方に関する指針(医療機関ホームページガイドライン)」のご紹介として、今回から3回にわたり「ホームページに記載すべきではない」として定められた事項について解説していきます。
医療機関ホームページガイドラインは、大きく二つに分けて「ホームページに記載すべきではない事項」と「ホームページに掲載すべき事項(自由診療を行う医療機関に限る)」で構成されています。
この構成になっているという時点で、「おや?」と思われた方も多くいらっしゃることでしょう。
そうです。前回のニュースにおいて、「今回のガイドラインは基本的に医療広告ガイドラインに準じた内容になっている」と述べましたが、医療広告ガイドラインはそもそもポジティブリスト方式を採用しているため、「ホームページに掲載可能な事項」と始まらない時点で、既に医療広告規制とは異なる考え方から出発していることが窺えます。
ホームページに記載すべきではない事項
(1)内容が虚偽にわたる、又は客観的事実であることを証明することができないもの
(2)他との比較等により自らの優良性を示そうとするもの
(3)内容が誇大なもの又は医療機関にとって都合が良い情報等の過度の強調
①任意の専門資格、施設認定等の誇張又は過度な強調
②手術・処置等の効果・有効性を強調するもの
③医療機関にとって便益を与える体験談の強調
④提供される医療の内容とは直接関係ない事項による誘引
(4)早急な受診を過度にあおる表現又は費用の過度な強調
(5)科学的な根拠が乏しい情報に基づき、国民・患者の不安を過度にあおるなどして、医療機関への受診や特定の手術・処置等の実施を不当に誘導するもの
(6)公序良俗に反するもの
(7)医療法以外の法令で禁止されるもの
①薬事法(昭和35年法律第145号)
②健康増進法(平成14年法律第103号)
③不当景品類及び不当表示防止法(昭和37年法律第134号)
④不正競争防止法(平成5年法律第47号)
上記の項目タイトルだけ見ると、やはり医療広告ガイドラインの「禁止される広告」と変わらないのでは?と思われがちですが、医療機関ホームページガイドラインでは「引き続き原則としてホームページを法の規制対象と見なさない」ことを強調しており、各項目の中身や例示は、インターネットにおける情報提供の簡便性(届けやすさ)や緻密性(書こうと思えば詳しく書ける)を加味した条件付きの内容となっています。
つまり、インターネット上のホームページでは説明するためのスペースや文字数等に限界がないため、客観的事実であることを証明できる十分な説明がされているのであれば、患者さんへの情報提供のメリットを優先してそこまで厳しく規制するのはやめておきましょうという方向性なのではないかと思います。
さらに、平成24年の3月に公表された「医療情報の提供のあり方等に関する検討会 報告書」においては、医療に関する広告規制のあり方について「現行の医療広告規制についてもポジティブリスト方式を改め自由化すべきとの声も上がったが、患者保護の要請と情報提供拡大の要請とのバランスをとる観点から、直ちにネガティブリスト方式へ切り替えることには様々な問題があると考えられるため、医療広告においては引き続きポジティブリスト方式を採用することとする。」(原文抜粋)と記載されており、検討会内部でも意見が交錯している様子が伺えます。
今後どこかのタイミングで医療広告もネガティブリスト方式に変更になる日が来るのかもしれません。
医療機関ホームページガイドラインは今回お話した通り「原則記載すべきではない」が、条件を満たして明確にするのであれば記載しても構わないという書き方になっています。従って、全ての医療機関のホームページが情報提供の手段を制限されたわけではなく、本ガイドライン(および医療広告ガイドライン)の意図を理解した上でホームページを運用されている医療機関にとっては、大きな問題にならないのではないでしょうか。
むしろ「医療情報の提供のあり方等に関する検討会 報告書」において、「今後都道府県の医療情報提供サイトへは、医療機関ホームページガイドラインに準拠した医療機関のホームページに限定してリンクを張るなどの工夫を可能な限り取り入れる」旨が示唆されている等、患者さんへの信頼性を確保し、他院との差別化を明確にする一つの切り口になると考えるのが宜しいかと思います。
次回から、いよいよ各事項の詳細についてご紹介していきます。