第2回「4年振りに医療機関のホームページガイドラインが改定となるか?」厚労省回答篇01につづき、第3回は建議2の「苦情相談情報の活用」についての回答篇です。
今回も、厚労省から発出された実施状況の報告書に加え、消費者委員会本会議におけるやり取りの議事録を基に、医療広告規制に関わる内容を抜粋して解説致します。
消費者に向けて、法令に違反する事実を発見した場合の相談窓口を開設し、周知させろ!
各都道府県には、健康被害を相談する「医療安全支援センター」が設置されている旨を国民に広く周知させ、国民から通報を受けた場合には、速やかに調査を行い、必要に応じて処分・行政指導を執行する体制を整えること。
建議2については、第1回の「4年振りに医療機関のホームページガイドラインが改定となるか?」これまでのおさらい篇でも述べた通り、厚労省にとっても特に反対する理由がないため、建議で要求された通り各所の通知を出し、周知したという対応をしています。
と建議の解説だけでは、わざわざブログで解説するまでもない内容なのですが、今回あえてご紹介する目的は、医療広告規制は現在どういう方達がどれくらいの人数で取り締まりを行っているものなのか?という行政の取り組み姿勢(本気度)を伝えるためです。
まずは、厚労省の回答に出てくるPIO-NETと医療安全支援センターとはなんぞやということから始めたいと思います。
PIO-NET(全国消費生活情報ネットワークシステム)とは、国民生活センターと全国の消費生活センターをネットワークで結び、消費者から消費生活センターに寄せられる消費生活に関する苦情相談情報の収集を行っているシステムのことです。
自治体は、国民の消費に関する苦情相談窓口を設置し、消費生活相談員による消費者からの「聞き取り」や「相談処理」を行っています。「聞き取り」から「相談処理」の過程は全てPIO-NETに記録され、ビッグデータとして被害の未然防止・拡大防止など行政に役立てられているわけです。1984年以降これまで収集した消費生活相談情報の累積件数は1500万件(2011年5月末現在)に上っています。
国民生活センターは、PIO-NETのデータをもとに商品別・商法別の相談件数やさまざまなテーマについての相談の傾向や事例を見ることができる「消費生活相談データベース」http://datafile.kokusen.go.jp/を公開しています。
今回の消費者委員会の建議についても、PIO-NETのデータが使われていました。
医療安全支援センターは医療法の規定に基づき、都道府県、保健所設置市及び特別区の日本全国で381か所に設置されています。
建議2への回答として、厚労省が医療安全支援センターの実績件数を発表しています。平成27年度10月の時点で、医療安全支援センター相談員は、1287名(うち専任は174名)います。
医療安全支援センター
この他、医療機関に立ち入りを行って、指導等を行う県職員などからなる医療監視委員は、全国で10,240名(うち専任は271名)いるとのことです(平成26年度4月時点)。
いかがでしょう?想像以上に多いと感じた方が殆どではないでしょうか?私も正直驚きました。
これだけ都道府県に人員が配置されているということは、もし実際にガイドラインが改定され、ホームページを規制の対象とすることが決定された場合、全国の医療機関のホームページを隅々までチェックできるのか?という疑問に対して、できなくはないと答えざるを得ません。
そうです。もはや全国の医療機関のホームページを全て確認できる体制は整っているのです。そうなると、4年振りに医療機関のホームページガイドラインが改定となり、医療機関のホームページは全て医療広告規制を遵守しなければならなくなる。という話も現実味を帯びてきます。
次回は、建議1に対する厚労省の回答として挙げられた「医療情報の提供内容等のあり方に関する検討会」の第1回が予定通り、前年度中に開催されましたので、その内容について解説致します。