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2016年4月21日

第1回「4年振りに医療機関のホームページガイドラインが改定となるか?」これまでのおさらい篇

先月末、厚生労働省にて「第1回 医療情報の提供内容等のあり方に関する検討会」が開催されました。

現時点ではまだ議事録が公表されておりませんが、開催資料を確認するだけでも、医療機関のホームページガイドライン改正に向けた動きが進行中であることがわかります。

これだけではわかりにくいと思いますので、事の発端となりました昨年夏に消費者庁が厚労省に対して提出した、「建議」から順を追って、医療広告に焦点を当てて解説していきたいと思います。

「美容医療サービスに係るホームページ及び事前説明・同意に関する建議」平成27年7月7日 消費者委員会

遡ること平成23年12月、消費者委員会は厚労省と内閣府に向けて、美容医療サービスの不適切な広告表示を徹底的に取り締まるよう求めました。この建議を受け、厚労省は平成24年9月に「医療機関ホームページガイドライン」を策定し、関連団体に自主的な取組を促しました。

しかしながら、医療機関ホームページガイドラインには法的な強制力がなく、行政指導の件数もごく僅かであったため、これまで努力目標といった形で軽視されてきました。その結果、美容医療サービスに関する健康被害を含む消費者トラブルの相談件数は、減少するどころか年々増大しています(図1:平成23年に約1600件であった相談が、平成26年には約2600件に増加しています)。

美容医療サービスに関する相談件数の推移
図1:(注)PIO-NETのデータ(データは平成27年5月31日までの登録分。以下同じ。)に基づき、当委員会が作成した。美容医療サービスとは、医療脱毛、脂肪吸引、二重まぶた手術、包茎手術、審美歯科、植毛などの「美容を目的とした医療サービス」を指す。

この状況に対して、同委員会は再三にわたり、必要な措置を講ずるよう指摘してきたようですが、一向に厚労省による検証・評価が行われないため、再度是正の建議をするに至ったいうわけです。またこの建議に対する対応を、平成28年1月までに回答するよう厚労省に求めました。

建議内容(医療広告に関わる内容のみ抜粋)

  • 医療機関のホームページを医療法上の「広告」に含めて規制の対象にするべきではないか?そこまでしないにしても、少なくとも医療広告ガイドラインで禁止している内容をホームページでも禁止にするべきだ。

    医療広告ガイドラインで禁止している内容とは?

    • 虚偽の内容
    • 他医療機関と比べて、優良である旨(優良誤認)
    • 誇大な内容(誇大広告)
    • 客観的事実であることを証明できない内容
    • 公序良俗に反する内容
  • 消費者に向けて、法令に違反する事実を発見した場合の相談窓口を開設し、周知させろ!

    各都道府県には、健康被害を相談する「医療安全支援センター」が設置されている旨を国民に広く周知させ、 国民から通報を受けた場合には、速やかに調査を行い、必要に応じて処分・行政指導を執行する体制を整えること。

考察

建議2.に関しては、既に都道府県で人員配置の動きもあるようですし、平成26年6月に改正された行政手続法により、国民から通報を受けた場合には行政は調査し、必要な対応を取らなければならないと規定されましたので、反対する理由はありません。
しかしながら、現状ホームページに関しては、上述の通り法規制に縛られていないため、取り締まるのは難しいところがあります。ならばホームページも医療法の枠組みに組み込めばいいじゃないか?それなら取り締まれるようになるでしょ?というのが建議1.のロジックです。

ただし、このロジックは些か横暴であり、取り締まりが可能になる一方で、ホームページによる患者さんへの情報提供が阻害されるリスクを孕んでいます。現状の医療広告ガイドラインはかなり厳しいため、厳密に医療広告ガイドラインにホームページをあてはめると、全国の殆どの医療機関のホームページがガイドライン違反になってしまいます。

例えば、医療広告ガイドラインではビフォーアフターの写真におけるビフォーのみ、アフターのみも禁止されているため、疾患を説明する際に患部の画像を掲載することもガイドライン違反になりかねません。(現にGoogleやYahooで広告しようした場合、疾患画像は違反とみなされ、ほぼ広告審査が通らないという状況になっています。)

他にも、広告ガイドラインで認められていない最先端治療やアンチエイジング治療・検査なども、記載できなくなります。今の世の中、ホームページで紹介できなければ、患者さんはどうやって情報を入手できるのでしょうか?

もちろん、何を書いても許される(お咎めを受けることはほぼない)という今の現状は、早急に是正する必要があると考えます。法規制を無視している医療機関が野放しで、遵守している医療機関が損するという社会が良くなるわけはありません。しかし、デジタルネイティブ世代が中心となっていくこれからの社会で、情報を制限すれば解決という安易なやり方は、時代に合わない措置であるように思われてなりません。一定の根拠を有する情報については、むしろ情報公開を奨励していくべきではないでしょうか。

ですので、今回消費者委員会が建議したように、ホームページを完全に医療広告ガイドラインに適用させないとしても、医療機関のホームページになにかしらの法規制を敷くという施策は自然な流れとして必要なのではないかと考えます。ただし、その「新しい」規制は患者さんへの情報提供を妨げない最小限に留め、その分処分を厳しくする(しっかりと取り締まる)という方向性が望ましいのではないかと私は考えます。

ちなみに、本建議が提示される1ヵ月程前の消費者委員会本会議(平成27年5月26日開催)にて、厚労省はホームページにおける虚偽や誇大表現等の不正行為は、医療法第28条および第29条における「医事に関する不正行為」に該当するおそれがあるとの考えを示し、こういった不正行為が判明した場合には、管理者の変更命令や医療機関開設許可の取り消し・閉鎖命令といった処分もあり得ると発言したようですが、同委員会よりそんな重い処分を課すなんて話は現実的でないと一笑に付されたようです。

医療法だけでなく、景品表示法等、他の法規制も厳しくなっていく流れは今後、さらに加速していくことでしょう。行政指導が入って初めて、自院のホームページや広告媒体が法規制に抵触していることを知ったという事態にならないよう、自院の現状を把握しておく必要があります。

本建議に対し、厚労省は平成28年1月25日付の厚生労働省発医政0125第8号で実施状況の報告書を公表するとともに、2/24の消費者委員会本会議で報告を行いました。この模様は次回のブログで解説します。

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