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2016年5月2日

第2回「4年振りに医療機関のホームページガイドラインが改定となるか?」厚労省回答篇01

第1回の「4年振りに医療機関のホームページガイドラインが改定となるか?」これまでのおさらい篇に続き、第2回はいよいよ建議に対する厚労省の回答篇です。

平成27年7月7日に消費者委員会から提出された「美容医療サービスに係るホームページ及び事前説明・同意に関する建議」に対し、厚労省は平成28年1月25日に「『美容医療サービスに係るホームページ及び事前説明・同意に関する建議』に係る実施状況の報告について」という回答を発出しました。

更に、厚労省医政局総務課長が第212回消費者委員会本会議(2016年2月24日開催)に出席し、本件について実施状況の報告を行ったとのことです。

第2回の回答篇01では、厚労省から発出された実施状況の報告書に加え、消費者委員会本会議におけるやり取りの議事録を基に、医療広告規制に関わる内容を抜粋して解説致します。

建議1:医療機関のホームページの情報提供の適正化

医療機関のホームページを医療法上の「広告」に含めて規制の対象にするべきではないか?そこまでしないにしても、少なくとも医療広告ガイドラインで禁止している内容をホームページでも禁止にするべきだ。(消費者委員)

厚労省の回答

  • 医療機関のホームページを広告規制の対象とするかどうかを議論する検討会を立ち上げる。
  • 都道府県等の担当者会議においてガイドライン等の周知を改めて実施し、指導の徹底を自治体に要請した。

解説

今回の建議に対する厚労省としての回答は、医療機関のホームページを広告規制の対象とするかどうかを議論する場として、医療政策に関する学識経験者、医療関係者、行政の立場の方、患者の立場の方、消費者問題に詳しい方らで組織される「医療情報の提供内容等のあり方に関する検討会」を年度内に新たに立ち上げ、本年秋頃に内容を取りまとめる目標とするというものでした。

しかし、消費者委員会本会議では委員長から、次のような厳しい指摘がなされており、消費者委員会としては納得する回答でなかったようです。

「今日に至るまで全部で9回、厚労省の方にお越し頂きヒアリングしてきましたが、現在の歩みは遅いと言わざるを得ません。美容医療の世界で起きてきている被害を十分に克服する対策としては、まだまだ十分ではありません。

今回も検討会を開くという回答ですが、検討会を開く、ガイドラインを作る、通知を徹底します、情報共有しますといったお話は、もう何度も聞きました。私も気は長いほうなのですが、それを平成23年以来聞かされてきて、ここに至ってなお十分な進歩が見られないということでは、こちらも建議した意味がないですし、我々の問題意識が全く消費者の権益の保護のために役立たないで被害者が出続けているということになります。

ガイドラインや自主規制できちんとした効果が上がっていないのであれば、法的な対応を速やかにとっていただく必要があるだろうと思います。
医療機関のホームページを医療法の規定に基づいて規制の対象にする広告に含める、あるいは広告に含めないまでも、その内容を広告に準じてきちんと医療法上、規制ができるような形にしていただくということを強く求めたい」

第212回消費者委員会本会議 議事録から抜粋

また、ホームページガイドラインの取り締まりを徹底する一環として、各都道府県で医療広告を指導している担当官を集め、建議について説明し、連携強化及び指導の徹底を依頼したようです。この都道府県等担当者会議は、全国7ブロックで毎年1回開催されている会議であり、平成27年度は計153名の担当官が出席しました。

これら各都道府県で集計された医療広告等に関する相談苦情案件に関するアンケート調査の結果が公表されました。

平成27年5月に都道府県、保健所設置市、特別区で実施されたアンケート調査
平成27年5月に都道府県、保健所設置市、特別区で実施されたアンケート調査。
平成28年2月24日 厚生労働省医政局総務課「美容医療サービスに係るホームページ及び事前説明・同意に関する建議」に係る実施状況について より抜粋。

この結果を見ると、意外に美容医療による相談・苦情件数が少ないと感じるのですが、その件については議事録にて厚労省担当官が、「実は美容医療として把握が出来ていないだけで、美容医療に関する件数は実態と比べて相当低めに出ている可能性がある」と述べており、そのままの数字を鵜呑みにするべきではないことを示唆しています。そうはいっても、本アンケートにて美容医療以外の科においても相談・苦情、そして行政指導件数が多く報告されていることから、「美容医療に限らず、ホームページによる情報提供を果たしてどう整理していくべきかということが主眼になってくる」と述べられています。

なお、医療広告に比べホームページの件数が著しく少ないことに関して、「ホームページについても広告の方でカウントされている可能性がないか?」という指摘がされていいますが、こちらについては「今回の調査が医療広告の指導に日々携われている都道府県の職員に向けて行われたものであるため、間違える可能性は低いと考えられる」という回答がされており、ある程度信頼が置けるデータであることが示唆されています。

恐らくキーワード広告経由のランディングページ等が医療広告の件数に含まれており、そのランディングページ上のキャッチーな表現が苦情の対象になったのではないかと私は予想しています。そしてやはりホームページガイドラインに法の強制力がないために、行政指導がしにくいという現状があるのではないでしょうか。

ちなみに、前回も話題にした処分について、本会議でも取り上げられています。

以前ホームページに虚偽や誇大表現があった場合、医療法第28条、第29条の医事に関する不正行為に該当する恐れがあるとコメントしていましたが、その辺りは都道府県にも何らかの形で文書通知されたのでしょうか?(消費者委員)

厚労省の解答
開設許可の取り消し等の処分は大変重いので、実際問題として使い勝手が悪いというか、より現実味のある効果的な取組を検討すべきであるという御指摘を頂き、私どももこの問題は改めて法令上の取り扱いも含めてしっかりと議論する必要があるだろうと考えて、検討会の立ち上げという方向で考えている次第です。したがって、現段階では28条、29条について明確化するような通知は発出していないところでございます。

初めからやる気がなかったのではないかと思われる、なんとも歯切れの悪い回答に、消費者委員会も苦笑したことでしょう。

次回は、第1回の「4年振りに医療機関のホームページガイドラインが改定となるか?」これまでのおさらい篇で述べた建議2の「苦情相談情報の活用」についての回答を解説します。

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