TOP

2018年8月16日

医療広告ガイドラインのQ&Aが更新

お盆が終わり、本日から業務開始という方もおられるかと思いますが、そんなお盆期間中に、広告ガイドラインのQ&Aが更新されました。

早速昨日、厚労省に疑義事項の電話確認を致しましたが、普通にお仕事されておられるようでしたので、お盆休みはなかったのかと心配してしまいました。(余計なお世話ですが)

 

さて、今回更新された医療広告ガイドラインのQ&Aですが、
医療広告ガイドラインのQ&A
https://www.mhlw.go.jp/content/000371812.pdf

6月1日に施行された新医療広告ガイドのために新しく作られたQ&A集というわけではなく、以前からある医療広告ガイドラインに、新医療広告ガイドラインに関わるQ&A、35問を新たに追加した形です。

また今回更新されたQ&Aは、6/28に開催された第10回医療情報の提供内容等のあり方に関する検討会(こちらの議事録も昨日付で公表されました。)にて議論された「医療広告ガイドラインに関するQ&A(案)」に、検討会の内容を反映させた確定版として発表されたものです。

「医療広告ガイドラインに関するQ&A(案)」は6/28の夜に公表されています。
その疑義事項を厚労省に確認した結果を、本ブログではQ&A(案)から確定したQ&Aへの変更点について解説いたします。

 

案から確定版への変更箇所として、細かい表現修正やわかりやすくするための文章追加といった軽い修正を除けば、主な変更点は1点のみです。

その変更箇所は、ガイドライン番号「Q1-18」の削除です。

 

下記、該当箇所をそのまま引用します。

医療広告ガイドラインに関するQ&A(案)
Q1-18 医療機関の検索が可能なウェブサイトに掲載された、治療等の内容又は効果に関 する体験談は広告規制の対象でしょうか。

A1-18 一般に、医療機関の検索が可能なウェブサイトのトップページには、特定性・誘引 性がないと考えられるため、広告には該当しません。他方、検索後等に表示される検索結果のページは、特定性・誘引性がある場合には、広告に該当します。

ここで言う特定性は、病院若しくは診療所の名称が特定可能であることをいいます。 また、医療機関の検索が可能なウェブサイトに対し、医療機関側に広告料という名目 ではなかったとしても登録料が発生している場合や、例えば、医療機関情報ページ、 予約システム、医療相談などが一体化したウェブサイトの予約システムのみに医療機関側の費用負担が発生している場合であっても、一体化したウェブサイト全体に誘引性があると考えられます。

なお、医療機関の検索が可能なウェブサイトは、患者等が自ら求めて入手する情報 を表示するウェブサイトに該当するため、広告可能事項の限定解除要件を満たした場合には、広告可能事項の限定が解除可能となります。

ただし、体験談については、個々の患者の状態等により当然にその感想は異なるも のであり、それらの体験談に基づきランキングを付したり、体験談を取捨選択しその 一部を掲載すること等によって、患者に誤認を与える蓋然性が極めて高いこと等を踏まえ、当該ウェブサイトに治療等の内容又は効果に関する体験談を掲載することはできません。

 

といった、医療ポータルサイトの取り扱いに対する、かなりボリューミーかつクリティカルな内容のQ&Aが削除になりました。

 

このQ1-18は、単に医療機関を検索・紹介するポータルサイトが広告対象に該当するか?という問題だけでなく、下記の疑問に対する回答が含まれている箇所でした。

 

  • ・検索ページは広告対象外だが、医療機関を紹介するページは広告対象になるという、同一サイト内でも広告に該当するページと広告に該当しないページに分かれるという判断がされるのか?
  • ・金銭の支払いに上位に表示させるといった検索の優遇処置をするようなオーソドックスな広告スタイルだけでなく、登録料や予約システムの利用といった付随サービスへの支払いも、誘引性があると判断されるのか?つまり医院を特定できる有料のウェブサービスは全て広告に該当するのか?
  • ・広告に該当したウェブサービスでは、治療内容と効果に関する体験談は記載できなくなったのか?

 

ポータルサイトに広告を出している医療機関への影響も大きいですが、とりわけ医療ポータルサイトを運営している企業にとっては、このQ&Aにより事業の継続が脅かされる事態になりえます。

 

「安価な登録料を支払えば、自院の紹介ページを持てる」あるいは、「ポータルサイト上の自院のページを見て、患者さんが予約システムを利用する毎にいくらのシステム利用料が発生する」といったビジネスモデルが主流であるポータルサイトにおいて、それぞれの医院ページで医療広告ガイドラインが守られているかなどの確認をしようと思ったら、月何千円かの管理費ではペイできなくなります。そんな薄利の中、違反している医院を見逃し、行政指導で公表になったなんてことになったら、目も当てられません。とてもハイリスクローリターンです。

 

そういった業界への影響が大きいからか、第10回あり方検討会において、Q1-18に対する疑義が出されます。

「口コミは患者さんが医療機関を選択する上で有益な情報であるため、これを一律に遮断することは国民の知る権利や表現の自由を脅かすことになるのではないか?サイト運営者がポリシーを守り、口コミを故意に間引くようなことをしないのであれば、口コミの掲載は許可してもいいのではないか」(議事録より抜粋・わかりやすく改変)

 

といった内容の指摘に対し、なおも渋る厚労省担当官に対し、構成員はこう述べます。

「グーグルやYahoo!も広い意味ではポータルサイトである。総合ポータルではよくて、医療ポータルではダメな理由があるのか」(議事録より抜粋・わかりやすく改変)

議論は解決しないまま、次回の検討会に持ち越しとなり、結果Q1-18は案から削除になりました。
口コミが是か非かだけでなく、Q1-18はその他にも影響が大きい要素を含んでいるため、このまま削除して終わりという対応では釈然としません。次回の検討会も注目です。

 

 

ここからは私の感想になります。

私もこれまでの検討会の経緯から、体験談に関しては、もうだいぶ話し合ってきたし、今更またひっくり返さなくてもいいのではないか。誘引性と特定性の条件を満たすサイトは全て広告に該当するというルールはわかりやすいですし、今回のポータルサイトが広告対象になるというのもロジックとしては間違っていないと感じていました。

しかし、このグーグルやヤフーだってポータルだろう?
というロジックはなるほど~。とつい感心してしまいました。

であるならば、私は「確かにその通りなので、主体が個人であろうが企業であろうが、特定性と誘引性がある全てのサイトは全て広告と判断する」ぐらいのことを厚労省には言って欲しかったなと思ってしまいます。そう断じることができない厚労省は、これまで同様、ポータルサイトの体験談は条件付きでOKという方向に緩和するのではなかろうかと思います。

でもどうでしょうね。誰でも書けるポータルサイトの口コミをどこまで許可すべきか、健康への影響が大きい医療分野でも表現の自由は守られるべきか?
慎重に考えるべきだと思います。

 

このQ1-18以外には、特にこれといった変更はなく、旧医療広告ガイドラインの時から記載が禁止されている「産業医」について、「記載を禁止したら、看板を書き変えるなどの医院への負担が大きい」などといった2周半遅れな発言など、構成員間のガイドラインに対する理解の差を感じさせます。

私としては、今回新たに追記となった未承認薬による治療に関する追記(Q2-13)のハードルの高さや、これまで広告可能な専門医の資格にするために頑張ってきた各関係学術団体の苦労を無駄にするような、「認定医・指導医・産業医」等の資格を限定解除可能とした(Q3-5)ことのやるせなさ等、もっと議論すべき内容があるのではないかと憤りを感じます。

ただ、このQ&Aは今回、一応の確定はされたものの、今後も修正をしていくとのことですので、まだまだ新医療広告ガイドラインから目が離せません。

このページを共有する