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2018年5月31日

新医療広告ガイドラインの第9回あり方検討会速報

本日、厚労省内にて、第9回医療情報の提供内容等のあり方に関する検討会(以下、医療情報あり方検討会)が開催されました。明日から施行になる新医療広告ガイドラインの行く末を見守るため、今日も約60席の傍聴席は満員でした。

 

先程検討会が終わり、即とんぼ返りで帰阪する新幹線の中で執筆しています。開催のアナウンスがつい1週間前だったこともあり、明日締切の案件を抱える中、強行出席でした。毎回そうですが、もう少し早くアナウンスして欲しいものです。

さて、本日の議題は、昨年夏頃から委託事業社が運営している医療機関ウェブサイトの監視体制強化を目的としたネットパトロール事業の途中経過報告と、厚労省が指揮をとり自治体が独自で運営する、言わば公の医療ポータルサイト運営のルールである医療機能情報提供制度に関する報告の二本立てです。

後半はその公式医療ポータルサイトについてでしたので、隣の記者もだいぶうつらうつらしてましたが、前半の通報サイトの報告については、かなりエキサイティングでわざわざこの会のために東京出張した甲斐がありました。

昨年8月から始まったネットパトロール事業は、まだ新ガイドラインが施行になっていないにもかかわらず、昨年度末までに一般からの通報が1612件もあったとのことです。

ネットパトロール事業は、厚労省から委託された事業者が約4000万円の予算を使って、医療機関のウェブサイトの違反チェックと医療機関への通知をするという事業なのですが、あまりにも一般から通報が多いため、その対応に追われて、キーワード検索によるチェックがあまり進んでいないようです。30年度は予算をさらに1000万円増やし、5000万円を投じて人員を拡大し、チェックの対応にあたるとのことでした。

どこにそんなお金が掛かるのか?と疑問に感じてしまいますが、通報された内容について、事業社内に設置された医師や弁護士からなる評価委員会なるもので審査を行った上で、医療機関に通知しているとのことですので、恐らくここの人件費に掛かっているのでないかと邪推しています。

審査対象になった事案は半年間で569件にのぼり、うち74件が違反ありと判断され、医療機関に通知されたようです。多い順から美容29%、歯科27%、癌24%だったとのことで、概ね予想通りの割合でしょうか。

前置きが長くて申し訳ございません。ここからが今回の本題です。

ネットパトロールの事例の参考として、新医療広告ガイドラインにおける禁止される広告についての限定解除の考え方が紹介されました。本資料は今日中に厚労省のサイトにアップされるとのことですので、こちらは必見です。

新医療広告ガイドラインの最もコアな要項であり、かつ最もわかりにくいのが、広告可能事項の限定解除の要件についてです。この限定解除の対象範囲がガイドラインからは非常に読み取りづらく、これまで様々なメディアでガイドラインについて解説しているものの、その多くが間違った解釈をしています。

特にこの禁止される広告の1. 広告が可能とされていない事項の広告が限定解除できるのかどうかは、議論が割れていました。というか、殆どの媒体が間違った解釈をしていたことが判明しました。かくいう私も誤った解釈をしていました。

ガイドラインにて、広告が可能とされていない事項の広告の例として以下の3つが挙げられておりますが、そのいずれも限定解除の対象であることが今回明らかになりました。

・専門外来

・死亡率、術後生存率

・未承認薬による治療の内容

実は、未承認薬の治療の内容に関しては、先週厚労省に電話確認していたので、わかっていたのですが、同じくその際に限定解除にならないと仰っていた死亡率も限定解除の対象になるとは、びっくりでした。同じく広告が可能な診療科との区別がつかないため、患者さんに誤認を与えるという理由で禁止されている専門外来も限定解除の対象であるという見解は、本当にそれでいいの??と驚きを隠せません。同様にアンチエイジングや審美歯科等の診療科も限定解除が可能なようですので、条件を満たしたサイトであれば、記載することが可能になります。

確かにガイドラインにおいて、限定解除ができない範囲に上記の内容は含まれていなかったため、理屈としては通るのですが、そこまでわかっていても、これらは限定解除できないと思っていました。

ただし、その一方で限定解除できない範囲に含まれていない、8.その他 の、費用を強調する記載、例えばキャンペーン等についても今回限定解除できない事項として紹介されたのは、矛盾を感じるところです。

こういった検討会の構成員すら把握できていない、ガイドラインのわかりにくい記載は再度是正すべきと思われます。実際そのような意見も今回出ましたので、いずれバージョンアップされることでしょう。

そして、今回も弁護士木川委員の鋭いツッコミにより、上記の限定解除の対象範囲が近日中に発表されるであろうQ&A集に掲載されることになりました。木川委員より早くQ&A集を出すべきです!という指摘がありましたので、早く発表されることを私も期待しております。

そろそろ大阪に着いてしまいそうなので、今回はこれぐらいで。詳しくは厚労省の公式サイトで発表される本日の検討会資料をご参照ください。

限定解除ができるかどうかで、記載できる範囲が大幅に変わりますので、医療向けのリスティング広告の需要は大きく減ることになるでしょうね。ルールをしっかり把握して然るべき対策が取れる医院とそうでない医院の差はますます開くと思われます。

 

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